沖縄2011(キジムナー編)


写真は、大宜味村の海です。
沖縄の民話には、キジムナ−という精霊(妖怪)がよく登場します。顔も髪も赤く、子供の姿をしています。本土の各地方に、川には河童、山には山童(やまわろ)という、子供ほどの姿をした妖怪の話が数多くあるのと同様に、キジムナーは、その沖縄版とも考えられています。
学生の頃、坂本龍一のアルバム『BEAUTY』に収録された美しい沖縄の歌(ネーネーズの方が参加)に感動したり、高嶺剛監督の『オキナワン・チルダイ』『パラダイス・ビュー』『ウンタマ・ギルー』(主に沖縄の精霊信仰や伝説をモチーフにした不思議な映画です)を観たりして、すっかり沖縄に憧れていたわたしは、就職して数年後に一人で沖縄に行きました。今から17年も前です。インターネットもないし、携帯も持ってなくて、那覇市内のモノレールも完成する前。『ちゅらさん』もまだの時です。
離島の竹富島なら、自然も多く残っていて、キジムナーの気配を感じられるかもしれないとワクワクしながら島に渡り、4日間過ごしました。まだ街灯もほとんどなくて、夜はものすごく星が見え(ハブがコワかった)、ビーチもベンチやシャワーが設置される前で、昔ながらの風景のように感じましたが、そのときすでに、以前はたくさんあったという星砂はほとんどなかったことを覚えています。それでも、キジムナーの伝説が生まれた沖縄の海や森の空気を初めて体験して、大感動したのでした。

そして、2007年。テレビで衝撃の番組を観ました。
NHKアーカイブスの「ぐるっと街道3万キロ また いちゃらやあ キジムナー 〜琉球妖怪譚〜」。1987年に放映されたドキュメンタリー番組の再放送です。
番組冒頭の漁師さんの話。沖縄の旧盆の季節になると、海上に赤い火の玉が飛び交っているのがしばしば目撃され、左目のくり抜かれた魚がよく獲れたそうです。火の玉の正体はキジムナー。魚の左目が大好物なのです。「昔はそういう魚がよく獲れたよー。」と普通の表情で話す60代くらいの漁師さん。
そして、本島 大宜味村(休館日だった芭蕉布会館の近くです)の喜如嘉という地域に住む70代の二人の男性。55年前(てことは1932年?)18歳の二人は工場に寝泊まりしていたそうで、ある晩、その一人が目を覚ますと、近くの川にボーッと光るものが。急いでもう一人を起こして、二人で川のそばにそーっと這うように近づいて見ると、赤い髪をしたキジムナーが夢中で川石をひっくり返しながら、蟹を獲って食べていたそうです。
その他にも、寒い日に焚き火に当たりに来たとか、家にあった大きなヤブニッケイの木の上に、家族の一員のように棲んでいたとか、オジイやオバア達が次々と証言。「そんなにかわいいもんじゃないよ〜」なんて、皆さん、いたって普通に話されるのです。
しかし、目撃談のほとんどは戦前のようです。戦後、森は切り開かれ、ダムや道路が作られました。キジムナーを見た場所が、米軍の演習場になってしまったという話もありました。ただ、大宜味村は戦火を逃れ、森も残っているため、ある方は、キジムナーを一目みたいと毎年旧盆に来られている、とのことでした。
エ〜ッッ!伝説じゃないじゃん!戦前までいたのか、キジムナー!!
本当にビックリ。でも、戦後姿を消したというキジムナーに、87年どころか、さらに開発の進んだ今、会うのは難しいです。
今回の旅はレンタカーで移動しましたが、やはり那覇市内ともなると特に車が込み合っていて空気も良くないです。観光に来るほとんどの人は、自分の車ではなくレンタカーなので、観光タクシーも含めて、はやく電気自動車になるといいなと思いました。
そして北部から那覇までの途中、行けども行けども道路の片側には、ずーっと基地が続きます。改めてその大きさに驚きました。ひどい戦火に追われて生き残っても、自分の家があった場所が、基地や演習場になってしまった方も大勢おられます。だからといって、街の経済のこともあります。わたしは、治外法権だけでも解決してほしいと思っています。
もうひとつ気になることが。沖縄だけの問題ではありませんが、九州・沖縄から台湾を挟んで向こう側の中国大陸沿岸に、今後10年以内に数十基の原発がずらりと建設される予定です。
ニュース記事→/ WSJ日本版 - jp.WSJ.com - Wsj.com
キジムナーは消えてしまったのかな。でもそうじゃないと思います。多分、人間の方から見えなくしてしまっただけ。でも、とても遠くに行ってしまったかも。


沖縄で大きな木を見ると、どうしても上の方を見てしまいます。