芳年さんカッコイイ!


昨日、太田美術館に月岡芳年の展覧会を観に行ってきました。
月岡芳年は、幕末から明治にかけて活躍した浮世絵師です。
芳年といえば、流血の残酷絵ですが、幕末の江戸は血なまぐさい事件が多かったせいか、歌舞伎の演出なども血がいっぱい出るようなものが庶民に好まれていたようです。
芳年はそうした庶民の好みに合わせて、自分の画風を確立したのだそうです。別にそういう趣味の人ではなかったんですね。
しかし血の色が実に生々しい〜!
歌舞伎や物語、また猟奇事件を扱った錦絵新聞の絵は、オーバーなくらい血みどろで雰囲気を盛り上げた絵になっています。
でも、上野戦争で戦死した彰義隊の死体をスケッチして歩き、その直後に制作されたという錦絵は、死を描きつつも生への執着が感じられるというか、いっそうリアルな死を描いている気がします。


上野戦争は、大政奉還後の強圧的な明治政府に反抗して、幕府側の兵士たち(ほとんど十代の若者)からなる彰義隊が上野の寛永寺に立て篭った事件です。結局は官軍に鎮圧されましたが、100人以上の若者が命を落としました。
わたしは杉浦日向子さんの「合葬」を読んで上野戦争を知ったのですが、上野に出かける時は、時間があれば公園内にある彰義隊のお墓に手を合わせるようにしてます。なんか、忘れ去られてるようで可哀想で。
芳年さんの絵は、官軍側よりも、若くして戦死した彰義隊の側に寄り添う気持ちが感じられます。江戸の人々も同じ気持ちだったのかな。


歌川国芳の門弟だった芳年さん。
師匠の国芳さんは、音楽で言うならビートルズのような(どのミュージシャンがアレンジしても、結局原曲が一番イイ)完璧な絵師ですから、歌舞伎の演目や物語の武者絵などの定番題材を描く時、師匠の完全な構図にとらわれないよう、独自の解釈で描くのは、大変だったんじゃないかな。

イヤしかし、一瞬の時を閉じ込めたような、見てるとゆっくり絵が動いているんじゃないかと思うような臨場感にあふれた画風は、芳年さんならではだし、西洋画の影響で、それまでの浮世絵にはなかった陰影や遠近感を取り入れた絵も、とてもカッコイイ。

ん〜〜尊敬するなあ!